2026年6月13日土曜日

黒猫と雷

黒猫と雷

夕方から夜に変わるころ、空が急に暗くなりました。

さっきまで静かだった部屋の窓に、ぽつぽつと雨の音が当たりはじめます。

黒猫は、いつもの窓辺に座っていました。

しっぽを体に巻きつけて、じっと外を見ています。

遠くの空が、白く光りました。

そのあと少し遅れて、低い雷の音が聞こえてきます。

ごろごろ、という音は、まるで空の奥で大きな何かが寝返りをうったようでした。

黒猫は耳をぴくりと動かしました。

でも、逃げるわけではありません。

ただ少しだけ目を細めて、また外を見つめます。

窓の向こうでは、雨に濡れた屋根が街灯の光を受けて、静かに光っていました。

電線にも、木の葉にも、細かな雨粒が並んでいます。

また空が光りました。

今度はさっきよりも近く、部屋の中まで一瞬だけ白く照らされます。

机の上の本。

読みかけのしおり。

湯気の消えたお茶。

そして、窓辺にいる黒猫の横顔。

すべてが一瞬だけ、絵本の一ページのように浮かび上がりました。

雷は少し怖いものです。

大きな音も、突然の光も、心をびくっとさせます。

けれど黒猫を見ていると、不思議と部屋の中は落ち着いて見えました。

怖いものが外にあるからこそ、部屋の静けさに気づくことがあります。

雨の音があるから、灯りのやさしさがわかります。

雷が鳴るから、そばにいる小さな気配があたたかく感じられます。

黒猫は、窓ガラスに映った自分の姿を少し見てから、小さくあくびをしました。

まるで「大丈夫」と言っているようでした。

外ではまだ、雷が遠くで鳴っています。

でも部屋の中には、本とお茶と黒猫がいます。

それだけで、少し安心できる夜でした。

黒猫と雷。

怖い音の中に、静かなぬくもりを見つけた夜の話です。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

PR
楽天市場

よろしければ、
のぞいてみてください


0 件のコメント:

コメントを投稿