机の上に、ひとつのマウスが置いてありました。
その横には、読みかけの本が一冊。
ページのあいだには、しおりのかわりに小さな紙がはさんであります。
午後の光が、カーテンのすき間から静かに入ってきて、
本の文字とマウスの丸い形を、やわらかく照らしていました。
そこへ、黒猫がそっと近づいてきました。
黒猫は本には目もくれず、
まずマウスの前で立ち止まりました。
白でもなく、黒でもなく、
少しだけ使い込まれたマウス。
人間にとっては、ただの道具です。
クリックして、動かして、画面の中を進むためのもの。
でも黒猫にとっては、少し違って見えたのかもしれません。
丸くて、手のひらにおさまる大きさで、
動きそうで、動かない。
黒猫は前足を少しだけ上げて、
マウスにそっと触れました。
カチッ。
小さな音がして、
部屋の静けさが一瞬だけ揺れました。
黒猫は驚いたように耳を動かし、
それから何事もなかったような顔で座りました。
本のページは、まだ開かれたままです。
画面の中には、まだ続きが待っています。
本を読む時間と、パソコンを触る時間。
紙の上の物語と、画面の中の世界。
そのあいだに、黒猫が一匹いるだけで、
どちらも少しだけやさしいものに見えてきます。
急いで読まなくてもいい。
急いで書かなくてもいい。
急いで答えを出さなくてもいい。
黒猫は、そんなことを言うように、
マウスの横で丸くなりました。
本のそばにあるマウス。
マウスのそばにいる黒猫。
それだけの静かな午後が、
なぜか少しだけ大切な時間に思えました。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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よろしければ、
のぞいてみてください

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