2026年6月28日日曜日
黒猫とヒマワリ
本棚のいちばん下に、古い絵本が一冊ありました。
表紙には、大きなヒマワリと、その足元に座る黒猫が描かれていました。
黒猫は花を見上げているのか、それとも遠い夏の日を思い出しているのか、少しだけ不思議な顔をしていました。
ページをめくると、そこには静かな庭が広がっていました。
夏の光をいっぱいに受けたヒマワリが、空へ向かってまっすぐ咲いています。
その下で、黒猫は影の中に丸くなっていました。
ヒマワリは明るくて、黒猫は静かで、まるで正反対のものが同じ場所にいるようでした。
けれど読み進めていくうちに、そのふたつはとてもよく似ている気がしてきました。
ヒマワリは太陽を見つめ、黒猫はヒマワリを見つめていました。
どちらも、何かをまっすぐに信じているようでした。
本の中の黒猫は、何も話しません。
ただ、ヒマワリのそばにいます。
風が吹く日も、雨が降りそうな夕方も、夏の光が少しずつ弱くなっていく日も、黒猫はその黄色い花のそばに座っていました。
読んでいるこちらまで、ページの中の庭にいるような気持ちになります。
本というものは、不思議です。
紙の上に描かれた小さな黒猫とヒマワリなのに、そこには時間が流れていて、風が吹いていて、誰にも言えなかった気持ちまでそっと置かれているように感じます。
明るいもののそばに、静かなものがいる。
それだけで、物語は始まるのかもしれません。
読み終えたあと、本を閉じても、あの黒猫はまだヒマワリの下にいるような気がしました。
夏の光の中で、何も言わずに、ただそこにいる。
その静けさが、心にやさしく残りました。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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