本は孤独をやわらげるのか。
部屋にひとり。
音もなく、話し相手もいない夜。
けれど机の上に一冊の本があるだけで、
その静けさは少しだけ質を変える。
ページを開けば、
そこには誰かの声がある。
遠い時代の、遠い場所の、
けれど確かに生きていた誰かの思い。
たとえば、太宰治の文章には、
弱さや迷いがそのまま置かれている。
「こんなふうに感じるのは自分だけじゃない」
そう思える瞬間がある。
孤独が消えるわけではない。
部屋の広さも、夜の長さも変わらない。
それでも、
本を読んでいるあいだだけは、
心の中にもうひとりの存在がいる。
作者であり、登場人物であり、
あるいはページをめくる自分自身。
本は話しかけてはこない。
けれど、静かに隣に座っているような感覚がある。
無理に励まさず、
ただそこにある。
本は孤独を消すものではなく、
孤独の形をやわらかくするものなのかもしれない。
完全にひとりではない、
そんな気持ちをそっと差し出してくれる存在。
だから私たちは、
また本棚から一冊を抜き取るのだろう。
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