2026年3月9日月曜日

男の子と麦わら帽子

夏の光がやわらかく降り注ぐ午後、男の子は森の奥にある小さな古本屋を見つけた。
木漏れ日の中で揺れる葉の影が、まるで本棚の間を迷う光の道のように見える。
男の子はそっと扉を開けた。

店内には色とりどりの本が並び、ひとつひとつが小さな世界を抱えていた。
その中で目を引いたのは、麦わら帽子をかぶった少年が描かれた薄い本。
ページを開くと、文字がふわりと舞い、微かな風が部屋を通り抜けた。

本の中では、麦わら帽子の少年が雲の上を駆け、森の小さな妖精と話をし、星の川を渡る冒険をしていた。
男の子はページの中に吸い込まれるように、声を出さずに笑った。
現実の世界では、帽子の端に小さな光の粒が落ち、ほんのり暖かい光となって手のひらに残った。

読み終えるころ、男の子はふと気づいた。
この小さな冒険は、本を閉じても消えない。
心の中に、麦わら帽子の少年と一緒に駆け回った夏の風景が、そっと居座っていた。

外に出ると、森の風が髪を撫で、太陽がにっこり微笑んでいるようだった。
男の子は帽子をそっとかぶり、今日もどこかで小さな冒険が待っていることを信じながら歩き出した。

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