2026年3月14日土曜日

男の子と桜の話

春の午後、公園の片隅に一本の桜の木が立っていた。

その木の下に、ランドセルを背負った男の子が座っている。
風が吹くたびに、淡い花びらがひらひらと舞い落ちてくる。

「きれいだなあ。」

男の子は空を見上げてつぶやいた。
空はやさしい青色で、桜の花はまるで小さな雲のように枝いっぱいに咲いている。

学校の帰り道、なんとなくここに来たくなったのだ。
理由はよく分からない。
ただ、この桜を見ると少しだけ心が落ち着く。

ふわり。

一枚の花びらが男の子の手のひらに落ちた。
小さくて、やわらかくて、少しだけ冷たい。

「また来年も咲くのかな。」

男の子はそう言って、そっと花びらを風に返した。
花びらはくるくる回りながら、また空へ帰っていく。

公園には誰もいない。
けれど桜だけは、何も言わずにそこに立っていた。

まるで、男の子の小さなつぶやきを静かに聞いているかのように。

そして春の風は、またやさしく吹いた。

0 件のコメント:

コメントを投稿