春の午後、公園の片隅に一本の桜の木が立っていた。
その木の下に、ランドセルを背負った男の子が座っている。
風が吹くたびに、淡い花びらがひらひらと舞い落ちてくる。
「きれいだなあ。」
男の子は空を見上げてつぶやいた。
空はやさしい青色で、桜の花はまるで小さな雲のように枝いっぱいに咲いている。
学校の帰り道、なんとなくここに来たくなったのだ。
理由はよく分からない。
ただ、この桜を見ると少しだけ心が落ち着く。
ふわり。
一枚の花びらが男の子の手のひらに落ちた。
小さくて、やわらかくて、少しだけ冷たい。
「また来年も咲くのかな。」
男の子はそう言って、そっと花びらを風に返した。
花びらはくるくる回りながら、また空へ帰っていく。
公園には誰もいない。
けれど桜だけは、何も言わずにそこに立っていた。
まるで、男の子の小さなつぶやきを静かに聞いているかのように。
そして春の風は、またやさしく吹いた。
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