2026年3月18日水曜日
男の子と稲荷神社の話
はじめてその場所を見たとき、
男の子は思わず立ち止まった。
目の前に広がっていたのは、
どこまでも続く赤い鳥居。
ひとつ、またひとつと並ぶその光景は、
まるで別の世界へ続く道のようだった。
「なにこれ……」
小さくつぶやいた声は、 少しだけ震えていた。
怖いわけじゃない。
でも、ただの景色じゃないことだけは、
はっきりと分かる。
男の子は、ゆっくりと一歩踏み出した。
鳥居をくぐるたびに、 空気が少しずつ変わっていく。
外の世界の音が遠ざかり、 足音だけがやけに大きく響いた。
やがて道は、山の方へと続いていく。
見上げた先にあったのは、 思わず息をのむような光景だった。
山の斜面に沿うように建てられた、 大きな赤い建物。
その姿は、まるで山に抱かれているようで、 同時に、空へ伸びていくようにも見えた。
「すごい……」
それ以上の言葉が出てこない。
ただ、見上げることしかできなかった。
どこか現実じゃないような、
でも確かにそこにある存在。
風が吹くと、どこからか鈴の音が聞こえた。
チリン、と小さな音。
その瞬間、男の子は思った。
ここには、何かがいる。
目には見えないけれど、 確かに見られているような気がした。
怖さはなかった。
むしろ、少しだけ安心するような、 不思議な感覚。
男の子はもう一度、赤い建物を見上げた。
それは、ただの神社ではなく、
何か特別な場所に思えた。
男の子の中にはひとつの感情が残っていた。
「また来たい」
理由は分からない。
けれどあの赤い鳥居と、 山に抱かれた建物の景色は、
きっとずっと、忘れない気がした。
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