2026年3月21日土曜日

男の子が見た夢シリーズ① 龍の背中に乗った夢の話


男の子が夢をみました。

それは、いつものように眠りについた、静かな夜のことでした。
気づけば男の子は、見たこともない広い空の下に立っていました。
雲はゆっくりと流れ、空気はどこかあたたかく、でも少しだけ不思議な気配がありました。

すると、遠くの空の向こうから、大きな影が近づいてきます。
それは、ゆっくりと羽ばたく、一匹の龍でした。
体は長く、うろこは淡く光り、まるで空そのものと一体になっているようでした。

男の子は怖いとは思いませんでした。
なぜか、その龍は優しい存在だと、はじめからわかっていたのです。

龍は男の子の前に降り立ち、ゆっくりと頭を下げました。
まるで「乗っていくかい?」とでも言っているようでした。

男の子は少しだけ迷いましたが、すぐにその背中へと手を伸ばしました。
触れた瞬間、龍の体はほんのり温かくて、どこか安心するぬくもりがありました。

そして、そのまま背中によじ登ると――
龍は大きく羽ばたき、空へと舞い上がりました。

地面はどんどん遠くなり、町も森も小さくなっていきます。
風が顔に当たり、男の子の心は少しだけドキドキしながらも、どこまでも自由になっていきました。

龍は雲の中を抜け、夕焼けのような空を泳ぐように進みます。
空の色は、オレンジから紫へと変わり、まるで世界がゆっくりと夢の奥へ沈んでいくようでした。

男の子はその背中の上で、ただ静かに景色を見ていました。
言葉は必要なく、ただそこにいるだけで満たされていく時間でした。

しばらくすると、龍はゆっくりと高度を下げ、最初にいた場所へと戻ってきました。
男の子が背中から降りると、龍はもう一度だけ優しく目を細めました。

そして次の瞬間、ふっと空に溶けるように消えていきました。

男の子はそこで目を覚ましました。

朝の光が部屋に差し込み、いつもの天井が見えます。
でも、あの温もりと、空を飛んだ感覚だけは、まだ体のどこかに残っていました。

「あれは、ただの夢だったのかな」

男の子はそうつぶやきながらも、少しだけ笑いました。

もしかすると、またあの龍に会えるかもしれない。
そんな気がした、静かな朝でした。

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